This review is by a person who could luckily attend the show at the U.S. Marine Officers' Club.
English here.
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この日のショーは本当に特別なものだ。会場が、日本であって日本でない米軍基地内でのコンサートであることもあるが、しかしそれ以上に感慨深いのは新たな千年紀を目前とした最後の日に行われるコンサートであるということだ。
会場は、沖縄の米軍基地 Camp Kinser 内の士官級の兵士以上のためのクラブ "Kinser Surfside"。そこで午後6時半から始まった New Year's Party の一環として KANSAS がプレイするのだ。会場内は着飾った海兵隊員の紳士淑女が占めている。そう、このパーティーには米軍関係者でさえ誰でも入れるものではない。米軍海兵隊の士官(U.S. Marine officers)とその配偶者のみが参加を許された "closed" なパーティーなのだ。フロアにはテーブルが整然と並べられ、観客は皆席に腰掛けている。通常のロックコンサートとはずいぶんと異なる光景だ。
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とは言え、堅苦しい雰囲気は特になく、すでにほろ酔い気分の観客はコンサートの開始を控えて興奮ぎみだ。ステージ前には氷で作られた KANSAS の文字が置かれ、その前で記念撮影をする人達もいる。しかし、なぜ KANSAS なのか? 世の中、他にもいっぱいロックバンドはいるのに... どうやら、基地内で数バンドの候補の中から投票した結果、KANSAS が選ばれたということらしい。素晴らしいじゃないか!
さて、午後9時。KANSAS のメンバーがステージに現われた。Steve の例の顎鬚は健在だが、Rich は髪の毛をずいぶん短くした。Robby のTシャツはあいかわらずクールだ。SE は、アメリカを賛美するドラマチックな God Bless America! 愛国心を何より求められる米軍兵士達はここでいやがおうにも盛り上がる。そして... 間髪入れずに始まったのは Song For America だ! 予想どおりとは言え、実際に目の当たりにしたこの流れは感動的である!
しかし、何より予想外だったのは「米軍海兵隊士官」という観客を前にして「やや控えめ」なコンサートとなるのではないかと思われたのが、見事に裏切られた点である。これまでに見た中でも今日の KANSAS はノリにノッテいる!!! あいかわらず素晴らしいフロントマンぶりを発揮する Robby Steinhardt はもちろん、日頃はおとなしい(?)Billy Greer も身体を揺らし、ベースを高く構えたアクションをキメたりと、バンド側もこの「特別な」夜を楽しんでいるかのようだ!
「プログレ」というカテゴリーに入れられることの多い KANSAS だが、KANSNAS の重要な個性として「ロックンロールバンドである」という点が挙げられる(日本では「ロックンロール」というと、1950年代あたりのロカビリーあたりの音楽だけを指すと完全に勘違いしている人が多いようだが)。複雑な展開、変拍子、叙情性、深遠な内容の歌詞など「プログレ」としての要素はもちろん強いが、同時に KANSAS の音楽には思わず身体を動かさずにはおかない「ロックンロール」としての要素が強い点も忘れてはならない。
そう、今日の KANSAS はロックしている!!! そしてあいかわらず素晴らしいアンサンブル!! この「特別な夜」をこうして目撃できたことはこの上ない幸運だ。
ところで、この日の観客は盛り上がってはいるものの、中盤を過ぎてもほんの一部を除いて皆テーブルに座ったまま鑑賞している。どうやらあらかじめ、席を立たないように忠告されているらしい。さすがは米軍基地。「ロックコンサート」とは言え「秩序」は維持されている。
それでも Play The Game Tonight では思わずステージ前で踊り出す女性も見られた。また最後にはステージ前に詰め寄ろうとする多くの観客もいたが、MP かと思われる屈強な男達に制止される一コマもあった。
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さて、ここで一曲一曲解説することはしない。そんなこと解説したって実際の感動を言葉で伝える能力は自分にはないから。ちなみにこの日のセットリストは、曲順が違う以外は前回の日本公演と何ら変わるところはなかった。(アメリカの)ファンの間では、最近 KANSAS がセットリストをほとんど変えていないことに対する不満もあるようだが、自分はタイトでよりエネルギッシュな素晴らしい演奏を心から楽しんだ。
特筆すべき点はいくつかあるが、まず最初に、Song For America で印象的だったのが、3番目のコーラス("... dreaming of a place our weary race is ready to arise")の直後で、Steve Walsh が "Yes, we are!!" と連呼していたことだ。この3番目の歌詞は現代文明に対する厳しい批判が込められていると思うのだが、それを米軍基地内という特殊な状況下で出来る限りポジティブに聴かせようと配慮しているかのように聞こえた。
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2番目は、(例によって)前後を Fight Fire With Fire で挟んだメドレー形式で演奏された Sparks Of The Tempest だ。日本ではこの曲は地味な曲と受け取られているようだが、アメリカの、少なくともここにいる観客はこの曲を心から楽しんでいるようだ! Robby のパワフルなボーカル。Rich のハネたカッティング。ロックと同時にソウルを感じさせる名曲である。
そしてもう一つは、Dust In The Wind で“スペシャル・ゲスト”の参加があったことだ。いや、Kerry Livgren ではない。Point Of Know Return が終わったところで、珍しく Billy Greer が MC を取り、そのゲストを紹介する。大の KANSAS ファンで、基地内のブルースバンドでギターを担当している Sgt. Darren Wheeler だ。世界中の KANSAS ファンが羨むであろうこの幸運な sergeant(軍曹?)の正確なアルペジオにより、Dust In The Wind はスタートした。彼にはまったく緊張している様子などない。沈着冷静。軍人としてきっと出世するに違いない。演奏が終わり、Billy Greer と握手して彼はステージを降りた。あーっっっ、羨ましい!!!(って俺ギター弾けねーじゃん)
そして最後は誰もが知っている Carry On Wayward Son だ。この曲でいつも思うことがある。いつもコンサートのハイライトで演奏されるこの曲で、歌でも演奏でも Robby の出番が極端に少ないのだが、果たして退屈ではないのだろうかと。しかし、そんな考えは彼の溌剌とした、ステージ上を縦横無尽に動き回るアクションを見ていると微塵もなく吹っ飛んでしまう。今日も彼のダンスとも“徘徊”とも取れるアクションに目が釘付けになってしまった。かつて Robby がバンドを離れていた時期、必然的に Steve がフロントマンを務め、彼の若々しくエネルギッシュな動きも印象的だったが(とは言え二人とも同じ年齢だが)、一見「ロックンローラー」というイメージとは異なる Robby のダイナミックで貫禄を感じさせる動きにも KANSAS の音楽そのものにも通じるオリジナリティーを感じる。
最後はおなじみの振り向きざまに観客席を指差す Robby のアクション! 1999年そして旧千年紀を締めくくる KANSAS のコンサートは終わった。午後10時30分。そしてKANSAS が会場を後にしたのは午後11時をやや回った頃だ。
ふと2000年問題が気になり始める。彼らは無事ホテルにたどり着けるだろうか? そして午前0時! 思わず外を見回す。電気は消えていない。自動車の流れも順調だ。何事もなく新千年紀の幕開けだ!!
今年 KANSAS は5月頃にニューアルバムのリリースを予定しており、そのためのレコーディングを1月下旬に開始するそうだ。今年も KANSAS そして皆にとって良い一年となりますように!!!
Thank you, KANSAS, for the unforgettable New Millennium's Eve!! KANSAS RULES!!